そもそもシリコーンゴムってなに?
シリコーンは、原材料のシリコン(ケイ素 Si)を精製してつくられる化合物です。
ケイ素と酸素が交互に結びついた特殊な分子構造(-Si-O-Si-)で、「有機物」と「無機物」の性質を兼ね備えており、高い機能性を発揮します。そのシリコーンからつくられたゴム状の材料が「シリコーンゴム」です。
シリコーンはゴム以外にも、樹脂状やオイル状など、精製方法によってさまざまな形状をとることができます。
シリコーンゴムの主な特性
化学的に安定したシリコーンは、さまざまな特性を持ち合わせます。
耐熱性 | 高温環境でも特性に変化がない |
---|---|
耐寒性 | 低温環境でも弾力を保つことができる |
耐候性 | 紫外線や経年変化、オゾンによる劣化に強い |
耐薬品性 | 酸や塩基に対して、高い耐性がある |
非腐食性 | 金属に対する悪影響がない |
耐水性 | 撥水性があり、防水効果がある |
離型性 | 表面張力が低いため、貼り付きにくい |
絶縁性 | 高い絶縁性で、電気を通しにくい |
シリコーンゴムの種類
シリコーンゴムは原材料の状態によって、「固形シリコーンゴム」と「液状シリコーンゴム」の大きく2つに分けられます。
固形シリコーンゴム(ミラブルシリコーンゴム)
固形シリコーンゴム(ミラブルシリコーンゴム)は、粘土のような固形状態の原材料です。
固形なので扱いやすく、一般的なゴム製品と同じようにロールで混練りし、専用のプレス機で加圧(コンプレッション成形)しながら熱硬化させ成形します。
液状シリコーンゴム
液状シリコーンゴムは、粘度の低いペースト状の原材料です。
液体なので成形の自由が高く、金型による射出成形(LIM成形)で、複雑かつ精密な部品を成形することができます。
藤倉コンポジットでは、完全密閉の自社クリーンルームで、高品質でクリーンな医療用シリコーンゴム製品を製造しています
◎LIM成形について、詳しくはこちら
医療の現場で使われる医療用シリコーンゴムとは
医療機器の部品や医療器具には、皮膚や粘膜、体液に触れても反応や変質が少ない高い生体適合性(人に対する安全性)と、耐薬品性が求められます。そこで使われるのが、「医療用シリコーンゴム」です。
優れた特性を持つ医療用シリコーンゴムは、ヘルスケアや医療技術の進歩によって、今後ますます活用が期待されています。
医療用シリコーンゴムと一般グレードとの違い
医療用シリコーンゴムと、一般グレードのシリコーンゴムでは、その要素や成分に大きな違いはありません。
医療用として製造プロセスを管理した上で、医療規格(ISO 10993)や、USP(米国薬局方)の厳しい適合性試験をクリアしたものが医療用シリコーンゴムとして認められます。
〈医療用シリコーンゴムの例〉
試験項目 | 汎用 グレード |
医療 グレード |
中短期 インプラント |
中期 インプラント |
---|---|---|---|---|
7日間の埋植 | ー | ● | ● | ● |
30日間の埋植 | ー | ー | ● | ● |
90日間の埋植 | ー | ー | ー | ● |
皮内反応(USP) | ー | ー | ○ | ○ |
急性全身毒性(USP) | ー | ー | ○ | ○ |
細胞毒性 | ー | ○ | ○ | ○ |
皮膚感作性 | ー | ー | ○ | ○ |
皮膚刺激性 | ー | ー | ○ | ○ |
加熱時の重量減少(EP) | ー | ー | ○ | ○ |
発熱試験(USP) | ー | ー | ー | ○ |
溶血試験 | ー | ー | ー | ○ |
変異原性 | ー | ー | ー | ○ |
クラスⅣ(USP) | ー | ○ | ○ | ○ |
医療用シリコーンゴムの用途
医療の現場では、コンタクトレンズ、バルブ(逆止弁・混注菅)、医療用マスク、チューブ・カテーテルなど、さまざまなシリコーンゴム製品が使われています。これらの製品は感染防止や減菌作業のコスト削減の観点から、多くが使い捨てのディスポーザブル(ディスポ)製品となっています。
そのなかでも、藤倉コンポジットで実績のある医療用シリコーンゴムの用途についてご紹介します。
医療用逆止弁
逆止弁は、チューブに接続して使われる小さなバルブで、正常とは逆の流れが発生した際に、弁が閉まり、逆流を防ぐ役割があります。人工透析器や酸素濃縮器などの医療機器には、輸液回路・呼吸回路の逆流を防ぐため、多数の「医療用逆止弁」や「ダイヤフラム」が使われており、クリーンで安全性の高い、医療用シリコーンゴムの需要が増えています。
医療用シール製品
高い安全性が求められる、人工呼吸器や点滴、薬剤投与、ダイアライザー(透析器)では、流体の漏れを防ぐため、「Oリング」や「パッキン」などのシール材が多く使われています。
医療用シリコーンゴムは、高温や低温などの厳しい環境でも機能性を維持できるため、医療の現場を問わず、安心して使うことができます。
バイオ医薬向けシングルユース製品
バイオ医薬や再生医療の製造プロセスでは、洗浄・滅菌工程が不要になる、一回きりの使用を想定した「シングルユース製品」が注目されています。シリコーンゴム製のシングルユース製品には、チューブやコネクタなどがあります。またシリコーンゴムは、その酸素透過性の高さから、細胞培養器の部材などにも使われています。
医療用シリコーンゴムの製造〈LIM成形〉について
LIM(リム)成形(LSR成形とも呼ばれます)は、液状射出成形[Liquid Injection Molding]の略。液状シリコーンの2液性材料(主材と硬化剤)を混合したものを、射出成形機で成形する製造方法です。
液状シリコーンが金型内にスムーズに流れるため、従来のコンプレッション成形に比べ、複雑で精密な成形ができ、品質要求のきびしい医療用シリコーンゴムの製造に最適です。
LIM成形とコンプレッション成形との比較
- 〈LIM成形の流れ〉
-
- 〈コンプレッション成形の流れ〉
-
比較項目 | LIM成形 (液状シリコーン) |
コンプレッション成形 (固形シリコーン) |
---|---|---|
寸法精度 | ○ | × |
大量生産(コスト) | ○ | × |
金型(コスト) | △ ※ | ○ |
異物混入リスク | 低い ※ | 高い |
工程数 | 少ない | 多い |
またクリーンルーム内でLIM成形を行うことで、異物混入リスクをさらに低くすることが可能です
クリーンルーム内でのLIM成形の工程
異物混入のない、高品質でクリーンな医療用シリコーンゴム製品の製造には、クリーンルームでの生産が欠かせません。
藤倉コンポジットでは、医療用の液状シリコーンゴムを使い、完全密閉の自社クリーンルーム(Class 100,000)環境下で、材料の供給からLIM成形、検査、梱包まで一貫した国内生産を行なっています。
① 材料の供給 | 液状シリコーンの2液性材料(主材と硬化剤)を、専用ポンプで供給する |
---|---|
② LIM成形 | 射出成形機を使い金型に注入し、加硫(熱硬化)する |
③ 洗浄・滅菌 | 成形された製品を洗浄し、高圧蒸気にて滅菌する |
④ 検査・梱包 | 製品の検査を行い、梱包する |
医療用シリコーンゴム製品の設計・開発はお任せください
この記事ではシリコーンゴムの特徴と、医療用シリコーンゴムの用途、LIM成形について解説しました。医療機器の小型化やモジュール化が進むなか、市場ではこれまでにない複雑で精密なシリコーンゴム製品が求められています。
藤倉コンポジットでは、強みとするLIM成形の技術力を活かし、シリコーンゴムと樹脂のインサート成形や一体成形など、お客様のニーズに合わせたASSY品の設計・開発が可能です。生産数に合わせた自動機導入など、最適な生産方法もご提案いたします。
医療用シリコーンゴム製品の設計・開発でお困りでしたら、ぜひ一度、藤倉コンポジットまでご相談ください。
医療用シリコーンゴムの関連製品
- 医療用ディスポーザブル製品
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医療機器・医療器具に最適な医療用シリコーンゴム製品を、クリーンルームにて一括生産しています。